駆け抜けた少女【完】
それは数刻前になる。
お華が、また気配なく現れた。
「勇さん、歳さん、お話しがあります」
近藤と土方の二人は、お華の登場に目を開き驚くが、直ぐに土方だけはニヤリと口端を上げた。
「ちょうど良い、俺もおめぇに聞きてぇことがある」
その後、夜番の藤堂と原田、隊士の指導をしていた山南と斎藤、永倉より先に帰隊した沖田が広間に呼ばれ、最後に永倉が揃った。
お華は、永倉が戻るまで一切何も話さなかったが、永倉が戻ると閉じていた双眸を開き一同を見渡した。
「お久しぶりです。 皆さん」
昔懐かしい、可憐な女子が柔らく微笑む。
こうして見れば、やはり矢央と似てはいるが、お華の方が落ち着いているせいか大人びて見えた。
「それで、話しってのは?」
土方が言う。
「……歳さん、そんな怖い顔で睨まないで下さい。 昔は、もっと……」
「今も昔も、俺は何も変わっちゃいねぇよ」
「……では、お話ししましょうか」
下向き加減に小さく笑うお華。
「私と、あの少女のことを」
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