駆け抜けた少女【完】
皆、それぞれに難しい顔をして見せる。
「つまり、矢央はお前の魂を半分持って生まれた。
そんでもって、お前の願いとやらを叶えたくて、未来から矢央を呼んだ……ってわけかよ?」
長い話の後、永倉は聞いた話を纏めると、お華を鋭く睨んでいた。
「その通りです」
「……っふざけんじゃねぇよっ!」
「し、新八さん!?」
突如怒鳴った永倉に驚く藤堂。
鼻息を荒くした永倉は立ち上がると、ズカズカとお華のもとに寄る。
「お前の気持ちも分からねぇでもない。 だがな、あいつを巻き込んでいいことじゃあねぇだろっ?」
「新八の言う通りだ。 お華、お前が無念の内に死んだのはアレだけどよぉ……。
それでも、平和な世で生きていた奴をこんな時代に呼んだのは間違いだぜ」
永倉と原田は、矢央を庇った。
共に暮らすうちに、純粋な少女が沢山傷付いていくのを見てきたのだ。
もしもこんな時代に来なければ、矢央は今も楽しく、苦しまずに過ごしていたはずだ。
痛い思いも辛い別れも、経験しなくていい思いを沢山した矢央は、今も何処かで苦しんでいると思うとやるせなかった。
その原因を作ったのがお華で、そのお華がそうしてしまったのが己等にあるのかと思うと、どうすればいいのか分からなくなる。
「……全て私が弱いからこその過ちです」
弱々しく言葉を繋ぐお華、と永倉の前に割ってはいる影。
「お華は、悪くない」
「総司……」
お華を攻め立てる永倉に対し、怒りを露わに立ちはだかるのは沖田である。
「お華は何も悪くなんてないっ! どうしようもない思いだってあるんですっ。
自分でも……自分にも、どうにもならないことはある!」
「惣司…郎、君……」
「総司、お前……。 じゃあ、矢央が犠牲になったのも仕方ないってのか?」
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