駆け抜けた少女【完】
永倉は沖田を見据えた。
黙ったまま沖田は、グッと奥歯を噛み締めた。
「それは………」
沖田は、背後にいるお華を振り返った。
愛しい少女が、己が殺めた少女が触れられる距離にいた。
いつも償いたいと思って生きてきた。
壬生狼と恐れられ、鬼神の如く剣に血を浴びせる己が唯一守りたいと願った少女。
だがその少女は己等のために、その魂を癒やすことなく、この地に止まり
そして、たった今、一人の少女を苦しめているのだ。
「お華の気持ちも分からねぇでもないさ。 だがな、あいつは何度か命を落としかけた。
多分これからだって、んなこたぁ沢山あるだろうよ……。
平和な世に生きていたはずのあいつが、もしこの時代で、俺等に巻き込まれ命を落とすようなことがあれば――」
永倉は、沖田の背後で黙ったままのお華に視線を向けた。
「俺は、お前を許せねぇよ」
「……僕もだ。 あの子は、純粋すぎるから、敵とか味方とか関係なく誰かが傷つけば涙を流す子なんだよ」
静かに語り出したのは、藤堂だった。
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