駆け抜けた少女【完】


「僕は、矢央ちゃんを守ってあげたい」


永倉と藤堂、そしてその二人の隣に原田も立った。


「左之……」

「俺はよ、難しいことは分かんねぇ。 けど、俺はあいつを追い詰めちまった責任があると思ってる。
だから、あいつを無事本来の世に帰してやりてぇな」



普段ふざけている三人組が、いつになく真面目で重い空気を放っている。


そんな空気を、更に重くしたのは、他でもないお華本人である。



「あなた方のお気持ちはよく分かりました。
私なら、あの子を帰すことは可能です。 でも、あの子は自ら歴史の渦に身を投じてしまった。 関わりすぎてしまった今、彼女を未来へ帰すのは得策とは言えないのです」


「それは、どういう意味だ?」


お華の言葉に反応を示したのは土方だ。


今のお華の言葉に引っかかるものがあるのか、その眉間に刻まれた皺は更に深さを増す。



「彼女が、此処に止まっていたならば、あなた方とだけの関わりだったならば良かったのです。
しかし、彼女は自分が何者なのかをあなた方以外にも話してしまった」


まさかと、皆には思い当たる節があった。


一度、矢央と関わったと見ていた、あの坂本だ。


厄介だな、と土方は心の中で呟いた。


「一人ではなく、二人も。
そして、多分これから更にその数は増えるでしょう。
何故なら、彼女が今いる場所は、あなた方の敵である長州藩桂小五郎の下にいるのですから」


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