駆け抜けた少女【完】
そんな二人のやり取りを黙って見ていたのは、山南と斎藤。
永倉に怒鳴られた後、ほんの一瞬だけ見せた少女の哀しげな瞳が気にかかった。
彼女は、何かを隠している。
そう思った山南は、とりあえずこの場をおさめることにした。
「まあまあとりあえずは、最初の目的である矢央君の居場所は分かったわけです」
ズズーっと、わざと大きな音をたて茶をすすると、山南はニコリと笑みを浮かべた。
「土方君、まずは矢央君を捕らえてはどうかな」
「……珍しいな。 あんたと意見が合うとは思っていなかったぜ」
新選組の鬼と仏。
山南は笑顔だというのに、鬼気とする迫力があった。
「わかった。 この話についてはまただ。 とりあえず間島矢央を………捕らえろ」
「土方さんっ、ちょっと待ってくれ」
「逆らうようなら……多少痛めつけてもかまわねぇ。 何が何でもとっ捕まえろ!
それとこれには永倉、そして総司の二人は関わるな、以上。解散だ」
「おいっ! ちょっ……クソッ」
言いたいことだけ言うと土方は広間を後にしてしまう。
とことん永倉の話は聞く気がない態度を示し、それに益々苛立ちを覚えた永倉。
土方が去った後、お華と総司は近藤に呼ばれ三人も広間を後にした。
残りの者も、次々に広間を後にする。
最後に残ったのは、永倉と何故か斎藤だけだった――――
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