駆け抜けた少女【完】
「それにね、"もしも"なんて言葉で未来を想像したって仕方ないわ」
お龍は立ち上がると、着物についた埃を払い落とす。
見上げる矢央に、ニコっと笑みを向けた。
「"もしも"や"もしかしたら"なんて考えるより、動くことが先じゃない?
先を恐れて何も出来ずに時が進むのを待つなんて、矢央ちゃんは若いのに勿体無い」
お龍の言葉に、また一つ頷く矢央。
もしもと悪い考えばかり縛られていれば、お龍の言う通り無駄に時は過ぎていく。
もしも彼らがいなくなったら(?)、もしかしたらあの時、ああしていれば(?)、
と縛られ、気づけば三月が経っていたではないか。
「大丈夫よ。 必要ない者を、誰も求めたりしない。 どんな形であってもね」
「はい………」
お龍は、この時確信したことだろう。
少女の居場所は、既に決まっているのだと。
自分が仕向けておいて、龍馬に申し訳なくなり、ふと笑った。
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