駆け抜けた少女【完】

「それにね、"もしも"なんて言葉で未来を想像したって仕方ないわ」


お龍は立ち上がると、着物についた埃を払い落とす。


見上げる矢央に、ニコっと笑みを向けた。


「"もしも"や"もしかしたら"なんて考えるより、動くことが先じゃない?
先を恐れて何も出来ずに時が進むのを待つなんて、矢央ちゃんは若いのに勿体無い」


お龍の言葉に、また一つ頷く矢央。


もしもと悪い考えばかり縛られていれば、お龍の言う通り無駄に時は過ぎていく。


もしも彼らがいなくなったら(?)、もしかしたらあの時、ああしていれば(?)、

と縛られ、気づけば三月が経っていたではないか。


「大丈夫よ。 必要ない者を、誰も求めたりしない。 どんな形であってもね」

「はい………」


お龍は、この時確信したことだろう。


少女の居場所は、既に決まっているのだと。


自分が仕向けておいて、龍馬に申し訳なくなり、ふと笑った。




.
< 464 / 592 >

この作品をシェア

pagetop