駆け抜けた少女【完】
「ほんま、変わった女や」
「久しぶりに会ったのに、その言いぐさ酷いですよ」
むすっとした顔を向ければ、瞬時に鋭い視線が突き刺さる。
ああ、そうだった。
己は、彼らから逃げ出した立場だったと思い出し、矢央は肩をすくめる。
「すみません」
「ほんで、答えは出たんか」
矢央と対面する形で、壁に背を預けた山崎は単刀直入に尋ねる。
実はずっと以前から、矢央の居所を掴んでいた。
先に見つけたのは三番隊隊長である斎藤で、矢央が龍馬といるのを見かけ、最初は斬ってしまおうかと考えた。
しかし斎藤は、斬らずに見逃すことにした。
何故そうしたのか、それは、少なからず矢央を追い詰めた負い目もあった。
それと別に、これは利用できるやもと企んだ。
斎藤は山崎に内密にと念を押し、矢央を見張るように言いつけ、機会を探っていたのだが。
「その前に、やらなきゃいけないことがありますよね」
「………」
山崎は、顔を伏せる。
矢央は笑顔を見せて、手をパンパンと叩くと「大丈夫ですよ」と、山崎に声をかけた。
「私は覚悟を決めました、とは正直まだ言えない」
「なら、俺はお前を……」
『逆らうならば、捕らえろ』
山崎の脳裏に、斎藤の言葉が浮かぶ。
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