駆け抜けた少女【完】
「分かりません。 私は、あの二人にどう接すればいいのか分からない。 それが分かるから、永倉さんに冷たくされるのかな?」
悲しげに微笑む沖田に、なんと声をかけるべきか。
最近、幹部の空気が悪い。
何となく、皆バラバラなような気さえする。
特に永倉が、皆の輪に入って来ないのだ。
「新八さんは信じてるからだよ。 矢央ちゃんを、此処で待つって。 あの人は、一度信じたものは疑わないからなぁ」
「羨ましい」
「え? 新八さんが?」
「ええ。 信じるというのは、そんなに簡単なことではないでしょ。 それでも信じ続けられるのは、あの人自身芯が通っているからです」
「はは。 左之さんは、ありゃただの頑固者だって言ってたけどね」
沖田の隣に並び、藤堂はウーンと背筋を伸ばした。
頬に当たる風は氷のように冷たくて、人肌を求めたくなる。
脳裏に浮かぶのは、少女の笑顔だ。
「さてと、稽古してくっかな」
「私がお相手しましょうか?」
にっこりと笑う一番隊組長。
藤堂もにっこりと笑い、「遠慮しておくよ」と口角を引き吊らせていたとか。
.