駆け抜けた少女【完】
第八話*再会と別れ
「長州の動きが怪しい?」
近藤が江戸から帰還して数刻経たぬうちに、土方は目を光らせて報告した。
近藤は長旅での疲れを癒やす暇なくそう言われ、顔に力みを入れて先を促す。
「ああ。 ここんとこ京に入る浪人も増え始めてる。最近静かだったが何か匂うぜ」
「…そうか。 それでどうするんだ?」
「今、山崎含め観察方が調べに回ってる。 もしかすっと、大物が釣れるかもしれねぇ。 近藤さん、覚悟しといてくれよ」
「うむ。 そうだな……」
歯切れの悪い生返事に、土方は眉を寄せた。
どうしたのかと尋ねれば、少し疲れただけだと言う。
「そうかい。 近藤さんには元気でいてもらわねぇとなんねぇ。 体は今の内に休めといてくれ」
「ああ。 すまないな」
襖が閉められると同時に漏れた溜め息。
新撰組局長である近藤は、あることについてお伺いを立てるため江戸に向かっていたのだが、
そのあることは結局解決しないままだった。
それは自分達新撰組とは何かということである。
天皇に仕え徳川家を後回しにしても外国勢力を抑えるための、尊王攘夷なのか。
本来ならば天皇を守るために存在する幕府に仕える、尊王佐幕なのか。
単なる佐幕の一つとして、会津藩や幕府から利用されているだけの存在なのか。
.