駆け抜けた少女【完】




「お前の後悔しねぇようにしろ。 今この場で、どちらにつくか決めるんだ」


永倉と密会した時、矢央はこれが本当に最後の決断をする時だと確信した。


今、この場で出した答えによって、自分の未来が大きく変わるのだと。


攘夷派につけば、新撰組とはもう仲間になれない。

寂しい時、辛い時、楽しい時、どんな時でも、この時代の最初を共に過ごした仲間。


きっとどちら側につこうと、一番恐れる死からは逃れられないだろう。

お華の血を僅かながらに受け継いでしまった、それが自分の運命だとすれば

死から、きっと逃げられない。

ならば―――――


「私…。 私は、またみんなと一緒にいられますか?」


矢央の選んだ道は現実に背を向けず新撰組と向き合って、そして共に歩み道であった。


永倉は、ホッとした笑みを浮かべた。

良かった。 矢央が、新撰組を選んでくれたことが本当に喜ばしい。


「お前の帰りを待ってる奴はちゃんといる。 だから、安心して帰ってこい」

「永倉さんっ……」

胸に飛び込んできた小さな体を、永倉は優しさで向かい入れた。


長かった。 此処まで辿り着くまで、沢山悩んだ。

だがやはり、帰る場所は彼らのいる場所なのだと矢央は心からそう思う。


「矢央。 新撰組に戻る前に、少しお前に頼みがある」


落ち着いた矢央に、真面目に話す永倉。


「もう暫く坂本に着いて、ちょっと探りをいれてほしい。 辛い仕事になるだろうが……」

「……分かりました」


永倉の言葉を遮った矢央。

「私だって、このまま何もなかったように新撰組に戻ることなんて出来ないと思ってました。 だから、何か力になれるなら」

「矢央…。 すまねぇな」


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