駆け抜けた少女【完】
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新選組に戻ると決断した時から、矢央は龍馬達を裏切らなくてはならなくなった。
密偵として、彼らの動向を探る。
それが矢央に与えられた役目であり、矢央自身は新選組にもう一度信じてもらえるためのチャンスではないかと思っている。
行き場なくさ迷う矢央を必要としてくれた龍馬や、守ってくれる以蔵を裏切ることになる。
とても辛い選択だった。
「これから、岡田に会うんか?」
「…はい。 コレを桂さんから坂本さんにって」
裏切り行為に胸を痛めながらも、しまっておいた久坂から預かった文を山崎に手渡した。
矢央が中身を見たところで、きっと内容は分からない。
しかしそれが山崎ならば、これは完璧に裏切り行為へと変わる。
ごめんなさい。 坂本さん、以蔵さん……。
罪悪感を感じているのだろう、矢央の眉が寄せられていた。
山崎は中身を見る前に、矢央の頭を軽く撫でてやる。
こうすることでしか少女を慰めてやる術を知らないのだ。
そんな己が、男として情けない。
「すまんな。 お前にはいっちゃん辛い仕事なんは分かってんねや。 せやけど…」
「大丈夫です。 これは私が決めたことだから……」
辛いけど、帰ると決めた。
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