駆け抜けた少女【完】
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五月の半ばを過ぎた頃、矢央の環境はまた大きく変化しようとしていた。
数日前から、池田屋には数人の浪士が身を潜めるようになっていた。
さすがの矢央も、これには何かあると思うようになる。
『無茶はしたらあかん。 お前が間者やと知られれば、ややこしいことになるからな』
山崎に釘を打たれていたものの、少しでも有力な情報が手に入るなら多少の危険は省みないつもりだった。
八畳程の閉め切られた部屋に、何人もの男達が溜まる。
最初にお茶を運ぶ以外は、矢央には部屋に立ち入る許しは与えられなかった。
こっそり近寄ってみようとしたが、それは直ぐにバレて追い返されてしまう。
何度も繰り返せば怪しまれてしまうので、他に手はないかと考えてみるが。
「屋根裏に入れないかな?」
まるで忍にでもなるかのような発言に、無理だなと己に呆れていた。
浪士達の会合は朝から夜まで、昼夜関係なく長い時間続けられていて、なかなか情報を得るチャンスがない。
行き詰まりを感じた体は休息を求め、外へと足を運んだ。
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