駆け抜けた少女【完】
「よっ。 寝坊助、もう飯は食ったか?」
「食べました。 あの…」
「そうかそうか」
「…………」
「……じゃっ」
「待てっ!!」
何とか逃げ去ろうとしたが、あえなく御用になる永倉。
裾を引っ張る矢央を首だけ振り返り見れば、逃がさないとその目が語っていた。
観念しろということらしい。
藤堂が話さなかったとしても、いつかは知れることかもしれない。
なら、と永倉はおとなしく縁側に腰を下ろした。
「先に言っとくが、お華は此処にはいねぇぞ」
「じゃっ、何処に!?」
「つぅか―…もう、この世にはいねぇ」
矢央は言葉を無くす。
この世にはいない。
その言葉の意味くらい、この平和ボケしている少女にだってわかる。
「お華はな、二年前の春先に浪士に斬られた」
「斬ら…れた……?」
受け入れ難い言葉に目を泳がせる。
頭の中で、何度もその言葉が回っていた―――――――