駆け抜けた少女【完】
「ごめんなさいっ」
「………」
「…さようなら」
ドタドタと足音が遠さかっていく。
気がつけば、以蔵は無意識に後を追っていた。
「矢央っっ!」
外に出た時には、既に姿は見えなかった。
もう手を伸ばしても、愛しい女には触れられないという現実が込み上げてくる。
半年ばかりの短い時を共に過ごし、友以上の感情を抱いていた以蔵。
『いつか故郷に帰れたら、おまんも着いてくるがが』
『いつか連れて行ってね。約束!』
指切りを交わした思い出が、ガラガラと音を出し崩れ去っていく。
「や…お……。 帰るな…。 側にっ…わしの側におってくれっ…」
壊れた心を、人間らしさを取り戻させてくれた矢央との別れ。
以蔵は、もういない少女の名前を必死に呼び続けていた―――
――さようなら―――
「矢央っ!!」
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