駆け抜けた少女【完】
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矢央が処罰を受けて今日で三日目。
さすがにそろそろ蔵から出してやれないかと、土方に願う藤堂がいた。
「本来ならば切腹なんだ、まだ足りねぇな」
「切腹って矢央ちゃんは武士じゃないじゃないかっ!」
「武士とか武士じゃねぇとかじゃねぇ。 あいつは自ら新選組に入隊した。 入隊した以上、本来ならば切腹だったものを、謹慎処分にしてやったんだ」
土方は筆を置き、藤堂に視線を向ける。
普段の土方は物静かで割と穏やかだが、こういった時の土方は、やはり新選組副長の鋭い表情を見せる。
「規律を崩させねぇためにも、今しっかり分からせねぇとなんねぇんだよ」
藤堂は、それ以上何も言えず、そのまま部屋を去った。
溜め息をつきながら廊下を歩いていると、ヒラリと一枚の桜の花弁が舞い落ちた。
ふと足を止めた藤堂は、目の前の人物を見て俄かに眉を寄せる。
「なんのよう?」
「平助さんは、あの子が可愛くて仕方ないのですね」
クスクスと笑われて、感に障る。
「なのに同じ顔を持つ私には、以前のようには接して下さらないのが少し寂しいです」
「お華ちゃんと矢央ちゃんは、別人だからね。 それに君は、以前の君とは違うだろ」
散り始めた桜に眼を向けるお華。
一定の距離を取る藤堂。
「違う、か。 確かに、そうかもしれない。 それでも、私は私なんです」
「何がしたいんだよ? これ以上、僕達を振り回さないでくれないかな」
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