駆け抜けた少女【完】


一番年齢が近かったお華と藤堂は、以前はそれなりに仲が良かった。

だからこそ、お華が亡くなった時も沖田と同様に藤堂も悲しんだ。

しかし、藤堂にとっては、それはもう過去のこととして受け入れ、前を見て歩いている。


そんな時に、矢央が現れ、そしてお華が現れ戸惑いに揺れた。

「正直言って、不気味なんだよ。 君はもう死んでいないのに、どうして現れたんだよ。 どうして、総司や矢央ちゃんを苦しめるんだよ」

「……私だって、苦しい」

「え………?」

「いいえ、なんでも。 それより、今日は久しぶり外出許可を貰えたので、散歩してきますね」

藤堂の横を風のようにふわりと通り抜けていく。


"私だって、苦しい"


脳裏に残ったお華の言葉は、藤堂の気持ちを更に重くさせるのだった。


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