駆け抜けた少女【完】

「隠しても直ぐにばれるならば話しておいた方が良いですね。
――今夜、新選組は怪我人が耐えないかもしれない」


六月下旬の強風の日を選び御所に火を放ち、その騒ぎの中京都守護職である松平及び以下佐幕派大名を殺害。

そして、天皇を長州へと連れ去ろうと計画を立てていた。


「古高の自供によれば、既に計画実行の多くの志士達が京に入り込んでいるらしくてね。
そして近々、集会が行われると言ったそうです」

「そんなっ…火って……」


恐ろしさに体が震えた。

強風の日に火を放てば、町中が火の海になるのではないか、と。

その上、殺害計画までも立てていたなんて。


吉田達がひそひそと話していた内容は分からなかったが、今となればあの時に知らずにいて良かったのではないだろう。


何故なら、あの時、この計画を知ってしまっていれば、矢央は平常心を保つことは出来なかっただろうから。


直ぐに怪しいと疑われ、今こうして新選組屯所にいられなかったかもしれない。

そう思うと、とても怖くなった。


「あ、でも……近々って言ってるのに、今夜出動なんですか?」

「古高の捕縛を知った彼らが、このまま大人しくしていると思いますか?」

「そうですね……」

「土方君は、今夜急遽集会が行われると見込んでます。
ですから、今夜はきっと荒れた夜になるでしょうね……」


更に調べた計画から、池田屋か四国屋が怪しいとまで踏んでいた土方は、隊を二つに分けて捕縛する計画を立てたのだった。

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