駆け抜けた少女【完】
気合いを入れてこいと言われて来たら、逆に励まされてしまった。
原田に下ろされた矢央は、既に気合い十分な彼らをぐるりと見渡し一度大きく頷いた。
「うん。 じゃあ、起きて待ってます!」
矢央の笑顔は不思議と皆を元気づける。
儚く散ってしまう桜のように薄桃色に染まる頬には、もう涙は流れていない。
「うっしゃっ! 気合い入れて行くぞ!野郎共っ!」
「オオオオオッッッ!!」
原田の掛け声に盛大な雄叫びが上がり、永倉、沖田、斎藤の三名は
これでは誤魔化した意味がない、と苦笑いを浮かべた。
皆が屯所から出て行くと、こんなにも広かったのかと一人残った玄関で小さく笑みを作る。
皆が無事に帰ってきますように。
両手の指を絡め神に願った。
神様がいるのならば、誰一人失わずに済みますようにと。
「………っ!?」
神は、やはり味方はしてくれないのだろうかと、矢央は背後に感じる気配に怯える。
否、大丈夫だ。
彼女もまた、彼らの無事を祈ったはずだ。
「お華さん……」
「行ってしまわれたのですね」
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