駆け抜けた少女【完】

お華と初めて出会ったのは夢の中。

闇に一点差す光の柱の中に、己に似た存在がいた時、とても衝撃を受けた。


涙を流し「彼らを助けて」と繰り返すだけのお華は、儚げでいて、しかし綺麗だとも思った。


真に沖田らを救いたいと、死なせたくないと願うお華を、あの頃の矢央は嫌いではなかった。

しかし今は、とても恐ろしい。


「あなたは…私でしょ? ならばどうして、分かってくれないの?」



お華は死ぬ間際に未来に託した。

己の生まれ変わりである矢央に、彼らを守ってほしいと。


本当にそれだけのつもりだったのだ。



「あなたなら、私の記憶を半分は受け継ぎ彼らを守ってくれると思ったのに。 なのにあなたは、私の想いに逆らって彼らから逃げ出したじゃない」


矢央を幕末へと導き、彼らに出会わせる。

そして新選組になる前に、江戸へと帰るように仕向けるのが、お華の企みだった。


しかし矢央は、お華の記憶の一片も残っておらず、だからこそ突然の出来事について行けなかった。


これが誤算となり、計画は大きく変わる。


時代に逆らい進ませるはずだったのに、時代の流れ、歴史の流れそのままに時は進んで行ったのである。


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