駆け抜けた少女【完】
ズンッと何かに押しつぶされるような感覚に、皆膝を地に沈める。
指一本、動かすのが困難な中、お華と矢央だけは動けるようだ。
「っ…ンなんだこれはっ!?」
じわりと汗が浮かび上がった。
「惣司郎君が、寂しい最期を辿るくらいなら……今、私が連れて行く」
「なっ!? 止めねぇか、お華!」
とんでもない事を言い出したお華に、土方はゾッと鳥肌が立つのを感じた。
お華の足下で、ウニャウニャと無数の黒い物体が蠢いていた。
気持ち悪いそれは、よく見れば大蛇であると分かる。
見たこともないような、大きく気味悪い大蛇の大群が、今にも沖田を喰い殺そうと迫らん勢いだ。
「うげっ。 此処に左之がいたひにゃ気絶してんな…」
「物の怪の類が苦手と言っていたな。 邪魔な奴はいなくて良かった」
「斉藤って、案外…平助に負けず劣らず、口が達者だよなぁ」
「…………」
「おいっ、くだらねぇ話っしてる場合じゃねぇっ。 総司がヤバいっ!」
「ンなこと言ってもっ…これじゃまともに動けねぇってっ」
この場で唯一動ける味方といえば、矢央ただ一人。
三人は、矢央の小さな背中を見ることしか出来ず歯がゆさを感じる。
.