駆け抜けた少女【完】
第四話*空を見上げれば君
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池田屋事件の後、京の町は殺伐とした空気が漂った。
取り逃がした浪士の残党捜索に荒れ、京の民は活気を無くすかと思われたのだが、
「祇園祭ですか?」
部屋にお茶を運んで来た矢央を出迎えた言葉に、矢央は目を輝かせる。
災厄除去を祈るための京の有名な祭りが、今年も行われることになった。
「あんなことがあった後だし、祭りは中止だと思ったんだけどねぇ」
「だな。 ま、災厄除去だし?」
厄払いをしようと思ってという、新選組への当て付けのように思え苦笑いを浮かべる。
「まあまあ、何にせよお祭りなんです。 楽しんだらいいじゃないですか?」
「あのっ!!」
部屋の住人達の会話を割り、矢央は興奮気味に体を前のめりに突き出した。
皆、矢央を見て言葉を待っている。
そわそわと肩を揺らし、頬を赤らめる少女特有の可愛らしさに、皆心が和んだ。
「あのっ…そのお祭り、みんな行くの?」
期待に満ちた双眸で見つめる。
やはり聞いてくると思ったのか、原田はガハハと笑い出す。
「ほらな、矢央は色気より食い気じゃねぇか」
「はい……?」
「いやね、島原に飲みに行こうと言ってたんですが、矢央さんはお酒より、お祭りを楽しみたいでしょうねって話してたんです」
何故笑われたのか、原田の言った意味が理解出来ずにいた矢央は、沖田の言葉に大きく頷いた。
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