駆け抜けた少女【完】
短い間だが関わった男。
色男でやたら口がたち、いけ好かなかったが悪い人ではなかった。
池田屋では、吉田稔麿の無惨な遺体とも対面した。
長州藩士と関わりを持った時には、裏切るつもりだったにしろ、ああいうことになるとやはり心苦しいものがある。
きっと恨まれてるよね…。
新選組を選んだ己が言うことではないが、どうか無事に逃げてほしいと思ってしまう。
「おっ、動きがあったみてぇだな」
原田が僅かに爪先立ちをし、前方の路地を見つめた。
「ねっ、ねぇ…もう行こうよ?」
誰かが捕らえられるとこなんて、できるならば見たくなかった。
もしも知り合いだったらと考えると、悲しいものがある。
矢央の気持ちを察した藤堂は、空いている片手で原田の背を押した。
「そうそう! ほら早く店に行って、お酒飲むんだろぉ」
「おう! そうだな!」
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