駆け抜けた少女【完】

短い間だが関わった男。

色男でやたら口がたち、いけ好かなかったが悪い人ではなかった。


池田屋では、吉田稔麿の無惨な遺体とも対面した。


長州藩士と関わりを持った時には、裏切るつもりだったにしろ、ああいうことになるとやはり心苦しいものがある。



きっと恨まれてるよね…。


新選組を選んだ己が言うことではないが、どうか無事に逃げてほしいと思ってしまう。


「おっ、動きがあったみてぇだな」



原田が僅かに爪先立ちをし、前方の路地を見つめた。



「ねっ、ねぇ…もう行こうよ?」

誰かが捕らえられるとこなんて、できるならば見たくなかった。

もしも知り合いだったらと考えると、悲しいものがある。


矢央の気持ちを察した藤堂は、空いている片手で原田の背を押した。




「そうそう! ほら早く店に行って、お酒飲むんだろぉ」

「おう! そうだな!」




.
< 565 / 592 >

この作品をシェア

pagetop