駆け抜けた少女【完】
シュンと落ち込む矢央の頭を原田はガシガシとなで回すと、腕の中にある荷物に目を落とした。
「なんだ、いねぇと思ったら買い出しに行ってたのか」
「あっ!はい。 大根と味噌が切れたから、頼まれて」
重そうだなと、原田は荷物を持ってやる。
「ほら、さっさと用事片付けて出かけるぞ」
「え? 出かけるってどこに?」
門は人で溢れかえり通れないので、裏口へと向かう原田の後を追いかける。
斉藤と島田に、またと頭を下げてその場を去った。
二人は荷物を女中に渡すと、また裏口に向かい、壬生寺へと向かった。
そこにいたのは、矢央には意外な人物だった。
「お、沖田さん! 寝てなくていいんですか?」
階段に腰掛けていた沖田の元に走りよると、心配いらいよと手を振った沖田。
「たまには外に出ないと、本当に病気になっちゃいますよ〜」
「で、でも…」
「それよりもほら、矢央さんも一緒にどうですか?」
一緒にと沖田が顔を向けた先には、子供たちと山南が遊んでいた。
どうやら鬼ごっこのようで、子供たちと山南は鬼から逃げている。
「鬼は誰が?」
「平助さんです」
「あ、ほんとだ」
違う方向を見れば、藤堂が追いかけているのが視界に入り、昼下がりの穏やかな光景に、自然と頬が緩む。
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