駆け抜けた少女【完】
そこへ矢央に気付いた藤堂は、バタバタと走りよって
「はいっ! 次は矢央ちゃんが鬼なっ!」
パシッ!と、矢央の肩に手を触れた藤堂に唖然となる矢央。
「え、ええ!? 私、まだ混ざってないしっ!」
いきなり鬼になれと言われても、まだ子供たちだって知らないのに困ると焦る。
しかし、焦る矢央を置いて原田と藤堂は壬生寺を去ろうとした。
「ちょっとっ!!」
「わりぃな、矢央! あとは任せたぜ!」
「ごめんだけど、よろしくね! お土産買ってくるからさ!」
「は? どういうこと……って、もういないし」
虚しく空気を掴む手を下ろした矢央の背後には、クックッと笑いに耐える沖田がいる。
振り返った矢央は、目尻に僅かに涙を溜めた沖田に見上げられ益々状況が分からない。
「やられましたね〜。どうやら、原田さんは平助さんを連れ出すために、矢央さんを連れてきたようです」
つまり、原田が出かけると言ったのは矢央もではなく、藤堂を連れ出したくて、代わりとして矢央に子供たちの相手をさせようと連れてきたのだった。
代打にされた、矢央は呆れ気味になりながら原田たちが消えた方を見つめると苦笑いする。
「やられた」
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