駆け抜けた少女【完】
第六話*蛤御門の変(禁門の変)
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六月二十四日、新撰組は会津藩より出陣命令が下る。
「池田屋での働きが認められ、この度我が新撰組も出陣の要請が入った! 皆の者、更なる働きしてみせようぞ!」
「おお――――っっ!!」
広間に集められた隊士らは声を張上げ叫び、それを見て満足そうに笑う近藤。
勢いを増す幕府側は、長州藩を京から全て追い払おうと立ち上がった。
「んで、働きが認められた割には戦のど真ん中から離されたもんだな?」
新撰組は今、九条川原で待機している。
出陣したはいいものの、御所には入れずにいた。
「なんか、何処に行っても邪魔者扱いだよなぁ。 あ〜、やる気なくす」
「んなこと言うなよ。 そのうち、本格的な戦が始まる。 休めるうちに休んでな。 ほら、あいつみてぇに」
戦いたくて仕方ない原田や藤堂はふて腐れながら、永倉が親指を指す方を見る。
そこにいたのは、緊張感の欠片もなく眠っている矢央だ。
この度の出陣にも、矢央は救護隊として参加していた。
「屯所を出た時には相当緊張してたからな、ちぃっと疲れたんだろ」
「あっちゃこっちゃ回されたからな」
「ほんと、良い性格してるよ」
「言えてらぁ!」
朝から移動に移動を繰り返していた新撰組は、夜になりようやく休息をとり、近藤や土方などは休む暇なく動き回っていた。
そんな中で、隊長たちは隊士を取り纏めながらも、いつ出陣命令が出ても大丈夫なように寝ずに待機しているのだが、
「間島の緊張感は半日と持たぬか」
「おっ、斉藤か。 そっちはどうだ?」
土方と行動を共にしていた斉藤は、眠っている矢央を見て顔色一つ変えずに言う。
「御所では薩摩藩が長州兵とにらみ合いが続いているようだ。 動きがあれば、直ちに出陣するからそのつもりで…と、副長が仰っていた」
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