駆け抜けた少女【完】
「どうして…。 あ、それより手当てをっ」
「ええっ! 触るなっ!」
久坂の腕からは真っ赤な血が流れ、早く手当てをしなければいけない状態なのに拒まれてしまった。
グッと唇を噛む矢央を睨み付けた久坂は、こう吐き捨てる。
「お前はやはり裏切りおったな。 桂はお人好しすぎじゃ。 そのせいで、沢山の仲間が貴様ら新撰組に殺されたっ」
「…ッッ……」
「吉田…吉田はお前を信用こそしておらんかったが、あいつは何故かお前を討とうとはさせなかった。 代わりに殺られてしまったがのぅ」
池田屋事件の恨み。
久坂にとっては、大切な仲間を殺され計画すら駄目にされた。
それをしたのが、憎き新撰組。
まだ記憶に新しい池田屋事件を思いだし、矢央は苦しくなる。
「なぜじゃっ? なぜ…このような思いをせにゃならん! なぜわしらが負けにゃならん!?」
久坂を含め長州兵は、幕府側に追いやられ既に敗北が目に見えた状況下でも戦い続けていた。
久坂は此処に辿り着くまで仲間を逃がすために盾になり戦ってきた。
最後の頼りにと、とある人物を頼って来たのだが、その人物はこの場から逃げ去り既にいない。
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