駆け抜けた少女【完】
"生きて帰ろうと思える"場所。
それは矢央とて同じで、ペースを落とした永倉にニコッと笑みを向けた。
「私の帰る場所も、永倉さんたちがいる場所です」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ。 ――それ、あいつらにも言ってやんな」
やっと新撰組の陣が見えて来たところで、永倉の視線が前を向く。
矢央も同じように前方を見ると、青ざめた顔をして走ってくる藤堂と原田。
その背後では、無表情で此方を見つめる斎藤と呆れ顔で溜め息をついた後に、此方に歩み寄ってくる山崎の姿があった。
「矢央ちゃぁぁぁん!?」
永倉に抱えられた矢央の周りに人が集まり、無事を喜ぶ者呆れる者怒る者と様々な反応だったが、それでも思う。
私の帰る場所は此方なんだ。 みんながいるから、私は絶対に死なない―……!!
焼け落ちていく建物を見つめ、一瞬思い出したのは久坂と吉田の顔だった。
亡き彼らも分も、自分は精一杯生きなければならないと―――
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