駆け抜けた少女【完】
陣に帰って来た矢央は、やはり土方に散々怒られることにはなったが、命があってこそ怒ってもらえているのだと思えば、普段とは違った捉え方ができるもので。
「くふふ……」
「なぁにを、笑ってやがんだ?」
山崎にも散々叱られながら手荒い手当てを受け、その直後に土方からの説教なのに嬉しそうに目尻を下げる矢央。
そんな矢央を睨み付け、土方は反省が足らん!と更に怒る。
「また土方さんのウッザイ説教聞けて良かったなぁって」
ピキッと、土方の額に青筋が浮かぶ。
ブルブル震える体を見て 「やばっ」 と逃げる体勢に入ったのは言うまでもない。
「こンの…糞餓鬼ぃぃぃっっ!」
「ご、ごめんなさぁぁいぃ!」
矢央が土方から逃げている間、京の街では逃げ遅れた長州兵が放った火によって大変な騒ぎとなっていた。
風の影響もあり、火は次々に建物に移り京都市街は焼け、これは後に "どんどん焼け"と呼ばれるようになる。
七月十九日。
一夜にして終わった蛤御門の変(禁門の変とも言われる)の後、長州兵が発砲したことなどを理由につけ、幕府は長州藩を朝敵とし "第一次長州征伐" を行うのである。
これに新撰組も参加したが、さすがに矢央は参加しなかった。
出来るなら、今は新撰組以外の人とは接したくなかった――――
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