駆け抜けた少女【完】
そして、この一夜の出来事が今日ある不思議な出来事を引き起こす発端となるのだ。
「あれ、そういえばさっきから矢央ちゃんの姿が見えないけどさ……何処にいんの?」
矢央の姿が消えたのにいち早く気づいた藤堂は、障子戸から顔を覗かせながら尋ねる。
「そう言われてみれば……、土方さんか近藤さんのところでも行ってるんですかね?」
「かな?」
そう考えに至った藤堂と沖田は、二人揃って土方の部屋を訪ねたが、
「矢央? いや、来てねえぞ」
「俺の所にも来とらんだろ。なんだ、いないのか?」
タイミングよく、土方と一緒にいた近藤も矢央を見ていないという。
おかしいな?
と、ここにしてようやくおかしいことに気づく。
矢央はこの時代に来てから、まだ知識のない赤子同然なので一人で外を出歩くなと指示されている。
「まさか、あいつ……」
許可無く外出したかもしれない。
そこにいた全員がそう思い至る。
「歳、それはまずい。 こんな夜更けだ、何が起こるやも知れんぞ」
心配顔で外を見る近藤。
今現在、京に不逞浪士が出没し騒ぎを起こし、その調査をしている真っ最中。
そんな中、少女が一人で外出なんてしたら。
「ああああっっ! 土方さぁぁんっっ、僕、捜して来ますっ!」
良からぬ想像をした藤堂は両頬に手を当て慌てふためく。
土方も、その危険がないとも言えないので、
「総司、藤堂、矢央をとっ捕まえて来い」
「了解!」
「はぁい!」
こうして矢央捜索が開始されたのだった―――――――