駆け抜けた少女【完】
何度目かの角を曲がった時、人の話声らしきものが耳を掠めた。
人がいると安堵した矢央は、民家が立ち並ぶ隙間に目を凝らす。
三、四人の姿が確認出来た。
助かった、と思ったのも束の間…………。
「何者だっ!?」
矢央の気配に気づいた一人の浪士が、矢央の前までやって来る。
「あっ、あの………」
「貴様、今の話聞いていたな?」
「え? いやいや、全く…」
数人の男達は腰に刀を差している上に、うろたえ始めた矢央を見て鞘に手を当てた。
危機的状況か?
口角をひくひくとさせ、ザッと後ずさるが直ぐに囲まれてしまった。
「逃がしはせんぞ…此処で死んでもらおう!」
「え――――っ! それは、やだっ!!」
嫌だと言って、はいそうですかでは済むはずもなく、男達は少女一人に対し全員が抜刀した。
「ちょちょちょちょっとぉぉ! 女の子相手にそれはないでしょうぉぉ?」
一人が刀を振り上げ襲い迫るのを、矢央は右に左にと避ける。
それが癇に障った男達は、次は一斉に飛び付いて―――