駆け抜けた少女【完】
何処か余所事のような感覚で、その斬り合いを見ていた。
自分の置かれた立場が危機感と変わるのは、もう暫し後のこと。
「このっ…幕府の犬共がっ!!」
そう叫び沖田に斬りかかる浪士は既に左肩に沖田の刃が刺さった後で、その痛みに柄を握る手に力が入らず、振り上げた刀を容易く沖田に避けられてしまう。
「その犬に噛まれる気分はいかがですかっ! 潔く観念しなさいっ!」
「……ッグアッ!」
一刀の下に浪士はあっさり倒された瞬間、辺りに血飛沫が舞った。
――ブシュッッッ!
仲間がやられ、気を荒立てる。
彼らに退くという観念はなく、この場で討たれてもいい覚悟がその眼に感じられた。
その気迫に、ようやく矢央は身体に震えが走った。
人が…死んだ。
初めて見る光景に、この場の危機を感じ逃げ場を求めるも足が震え動くことがままならない。
そんな矢央の背後に影が浮かび上がった。
「女ぁぁぁっ死ねぇぇぇっっ!」
「――――っっ!!」
「矢央ちゃっ―……っ!!」