駆け抜けた少女【完】
その瞬間だった。
矢央は、血が溢れる傷口に手を当てた。
「……っ……」
触れられている箇所が火に炙られているかのように熱を帯び、ズキッと痛みが走り抜けた。
「あつっ……!?」
ズキズキと疼く腕には、未だに矢央の小さな手が触れている。
あまりの痛みに藤堂は頭を下げ、その様子を見ていた沖田は「え?」と息を漏らした。
「……どうして……」
沖田が目にしたものは、矢央の手が退けられた藤堂の傷口が完全に塞がっていたもの。
ザックリと切れていたはずの傷口が、血も止まり塞がっていて、それどころか元々斬られた真実が無かったかのようだった。
どうなってるんですか?
不思議な出来事を起こした少女に視線を送ると、涙を浮かべた表情が多少落ち着きを取り戻し初めている。
「ん…んんっ? あれ? 痛くない…てか、塞がってる? なんでなんで!?」
先程まで感じていた焼けるような激痛は嘘のように去り、藤堂は手を握りまじまじと確かめている。
それを見て、矢央は安堵の息を吐いた。
「矢央さん、あなた何をしたんですか?」
「―――――え?」