駆け抜けた少女【完】
第三話*不思議な力
お願い
お願い
彼らを
傷つけないで…………
夢を見た。
自分そっくりの少女が、たくさんの涙を流し懇願する。
その姿を傍らで見ながら………
「―――っっ……!?」
気がつけば、行灯の淡い明かりが灯された一室に寝かされていた。
夢に驚き目を開けた矢央を幾つかの視線が見下ろしていた。
「良かった…気がついたみたいですねぇ」
「……?」
ホッと一息ついた沖田は、矢央の視線が右往左往していることに心配顔で話し掛ける。
「矢央さん、矢央さん?」
「――――此処は……?」
「私達の部屋です。 覚えてますか? あなたは、斬り合いの後、倒れた…………」
倒れた?
次第に記憶を追い始める。
永倉と原田の後をつけたはいいが、途中ではぐれてしまった。
そして屯所への帰り道を探っていると、数人の浪士に運悪く出くわしたが、間一髪のところを沖田と藤堂に助けられる。
―――が、藤堂は矢央を助けた際に左腕を負傷したのだった………。