駆け抜けた少女【完】
その後、私は?
記憶を辿っていると、身体を鋭く貫く痛みが矢央を襲う。
「いたっ……!?」
動かせない程の痛みが左腕から伝わってくる。
何が起こっているのかわからない。
いったい自分の身になにが……。
「矢央ちゃん、左腕縫った痛みは暫く癒えないと思う」
「左腕……縫った……?」
何故自分の左腕が縫われたのか。
縫わなければならない程の痛手を負ったのは自分ではなく、藤堂だったはずだと、悲痛に顔を歪め留藤堂を見上げた。
痛みに朦朧とした眼で見られた藤堂は、自分の左腕を矢央の前に差し出した。
傷がない?
均等に筋肉のついた白い腕には一切縫った痕跡はなく、傷すらついていなかった。
どうなっているのか。
そう疑問を浮かべるのは矢央だけではない。
「矢央……お前は、いったい何者なんだ?」
「………土方さん」
部屋には今回の騒動に直接関わった藤堂、沖田に加え、報告を受けた近藤、土方、山南。
そして、矢央が屯所を抜け出した原因である永倉、原田までもいた。