駆け抜けた少女【完】

天井が霞んでいく一方で、やけに頭は冴えていく。


ゴッソリと抜け落ちた記憶と、自分がしたはずのない怪我。


何よりも気になるのは、夢。



あれは、紛れもなく私だった。


夢の中の綺麗な少女と、その少女が泣き崩れている傍らで、不気味に微笑んだ少女。



――――ゾクッ……



どちらの少女も自分。

泣いていたのも、笑っていたのも、どちらも。


「……うっ……っ……」


とめどなく溢れ出る涙の粒。

苦しくて仕方なかった。


腕の痛みからくるものではなく、ずっと昔から抱えた悩みを思い出したかのように


心が痛い―――――――






< 73 / 592 >

この作品をシェア

pagetop