駆け抜けた少女【完】
「平助のその間抜け面は、いつ見ても笑えるぜ! こりゃ三日は笑えらぁ!」
「あんた失礼だな。僕の顔で三日笑えるとか意味不明なんだけど」
三日間笑い続けて、そのまま死ね。
永倉はそう密かに思った。
笑い続ける原田、その原田を睨む藤堂、呆れ疲れた永倉を矢央の傍らで見つめていた沖田は、小さく微笑んだ後チラリと矢央に視線を向ける。
「今は何も考えず眠るといい」
優しい声色に、またはらりと涙が流れた。
「ごめんなさい……」
「謝る必要などないでしように。 腕は……痛みますか?」
コクンと頷いた矢央。
縫われた後、医師が残していった痛み止めと熱冷ましの薬を沖田は布団の側に寄せた。
「少し楽になると思いますよ」
矢央を支え起こし、白湯と薬を渡し飲むように勧める。
素直に受け取った薬を飲むと、喉を通る味の不味さに顔をしかめた。
「まじゅ……」
「あははは。 そりゃ、薬ですからねぇ」
全部飲むのに、暫く時間をかけてしまった。
飲み終わり矢央を布団に寝かせた沖田は、まだ騒ぐ三人に身体を向ける。
「そこのお三方お静かに願えますか?」
「「「え?」」」
「あまりにうるさいと、ついうっかりで斬っちゃうかもしれないですよぉ?」
カチャッと握られた刀が音を鳴らすと、笑っていない目に見られ三人は「ひぇぇぇ」と、身を寄せ合ってプルプルと震えた。
それを見て刀を横に置くと、瞼を綴じた矢央の髪を優しく撫でる。