駆け抜けた少女【完】
しかし、あの時……。
皆が寝静まってからも沖田一人は眠れずにいた。
のそりと布団から這い出て縁側に座った。
矢央が藤堂の傷を癒やした瞬間に感じた気配、それが凄く懐かしく感じた。
不思議な力と、不思議な雰囲気を漂わせていた。
矢央の背後に………
お華がいた。
確かに一瞬だったが沖田には見えていた。
藤堂を優しく包むお華の姿を、自分のこの眼で。
「あなたは本当に何処からやってきたんだ…」
その沖田の悲しき問いは、誰にも届かない。
その答えを知るのは、彼の姿を見つめる一人の少女……
ただ、一人だけだった。
その摩訶不思議な出来事は、京の町に夏が訪れる矢先の出来事であった―――――