駆け抜けた少女【完】





空は何処までも青く、頬を撫でる春の風はとても気持ちがいい。



「フンフンフン」


鼻歌を奏でながらいつになく機嫌の良い大柄な男を、まだ幼さの残った青年は訝しげに見上げた。


「左之さん、何か良い事でもあったの?」

「ん? ああ―……まぁな」

「平助、左之はな昨日島原で武勇伝を散々語り散らしたから……機嫌が良いだけだ」


多少の間はきっとその武勇伝に付き合わされた本人だけは、ご機嫌良くないと訴えたいのだと分かってしまう。


ーーーーああ……例の腹、ね。



藤堂平助は機嫌の良い原田左之助と、そうでない永倉新八に挟まれながら苦笑いを浮かべている。



「平助にも俺様のモテっぷりを見せてやりたかったぜ!」

「いやー、遠慮したいかな」

「んな連れねぇ事言うんじゃねぇ!」

「左之……煩い」

「んだよ新八ぃ…自分がモテなかったくれぇで僻むな僻むな! 武士の名が泣くぜ! ガハハハッ!」


原田の高笑いに永倉は額を押さえながらため息をつき、藤堂は相変わらず苦笑いだ。



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