駆け抜けた少女【完】
神社の掃除をしていた時、あの桜の大木が自分をこの時代に導いた。
何千年もあの場を見守っていた御神木、強ち神の力が宿るのは嘘ではないかもしれない。
そして、導かれるように掘り起こした赤石こそが、お華が自分の力を封じた守り石だった。
それを手にした瞬間に感じた懐かしさは、お華の記憶だった。
「どうして、私がお華さんの記憶があるのかも、どうしてこの時代にやって来たのかもわからないけど……」
自分とお華という人、別人であって別人ではないということがわかった。
矢央の中には、矢央自身の記憶と感情がある。
だが、お華の記憶と感情も少しずつ蘇っていくのだ。
だから…………
「沖田さん達に会った時、とても懐かしいと感じたんです。
私は初めて会ってるけど、そう思えたのは私の中にお華さんの記憶があったから」
「お華の…記憶…」
「沖田さん、私の着物の中に赤い石があるんです……取ってもらえますか?」
頷いた沖田は、畳の上に畳まれた矢央の着物を探った。
寝静まった部屋に布擦れの音が響く。
赤石、暗闇でも異様に光り輝いてみえた。
「それは……お華さんの魂そのものです」
「―――――え?」
天井をじっと見上げている矢央と、掌に乗る赤石を交互に見やった。
とても信じられる内容じゃなかったが、沖田は一瞬、その赤石がドクンと疼いたのを感じ目を見開く。