駆け抜けた少女【完】
「お華さんは、私に何かをしてほしいと強く思ってる」
夢の中で、いつも泣いている彼女はきっとお華だと矢央はようやくわかった。
――お願い、お願い―……
と、ずっと泣きながら懇願する様子が胸に響く。
だから悲しくて仕方ない。
お華の切ない想いが、その赤石を通じて伝わってくる度に矢央もまた悲しくなってくる。
「沖田さん、お華さんを斬ったのは……あなたなんでしょう?」
「―――っ!」
沖田は言葉を失ってしまう。
矢央には誰も語らなかった事実を、矢央はお華の記憶を通して知ってしまった。
道場から神社へと毎日通っていたお華、そこに眠る祖父の墓参りを兼ね掃除を日課にしていたようだ。
そしてある日、やけに帰りが遅い事を気にした沖田はお華を迎えに道場を出た。
「お華さんは、神社で沖田さんを守ろうとして……」
「私が、彼女を殺したんです」
ドクンドクンと疼く赤石を見つめる瞳は冷ややかで、チラッと見た矢央は、ゾクッと身を震わせた。