駆け抜けた少女【完】
「誰……?」
振り返ったお華は、この辺りでは見かけない男に警戒心を露わに向き合った。
身なりは落ちぶれた侍といった感じで、ここ最近まともな宿に寝泊まりしてない雰囲気が漂っている。
「ほお…これは別嬪さんじゃねぇか」
身なりの悪い男は、お華を見て不適に笑うと大きな手を伸ばしてくる。
「いやっ……」
「ちょっと楽しもうぜ?」
あからさまな下品な笑みに、お華は足を後退させたが小石に躓き転けてしまった。
それを好機と思った男はお華の体に飛び乗り、腕を拘束すると脇差しを持ち、抵抗させまいとお華の喉元に当て動きを封じた。
「悪いよぉにはしねぇ…」
「っっ……!」
グッと唇を噛み締めた時――――