駆け抜けた少女【完】
「何をしてるっ!?」
石段を駆け上がって来たばかりの沖田に、男はにやっと笑う。
沖田惣司郎、この時はまだ十八になる手前で剣術の腕は達者なものだったが見た目は優男で、とても強そうには見えない容姿をしていた。
その沖田を見て、男は大したことはないと判断したのだろう。
「惣司郎君っ……!?」
「お華っ!!」
男に組み敷かれているお華を見た瞬間、沖田は腹の底から怒りを感じた。
自分や仲間がこれまで大切に守ってきた少女が、薄汚い男に犯されかけている。
グッと拳を握り、走り出していた。
だが沖田はこの時まだ刀を持っていない、飛びかかってきた沖田を交わした男はお華を盾にして向き合った。
「へへっ、へなちょこの分際で俺に勝てると思ったか!」
「……くっ!」
こんな男に負けるはずはない。
だが、自分は武器といえた物を持ってはいない。
明らかにこちらが分が悪かった。