駆け抜けた少女【完】
逃げ腰となった男に、沖田は刀を振り上げた。
「だめぇぇぇぇっっ!!」
その妖刀は血を求めている。
だからその妖刀で沖田に人を斬ってほしくない。
笑顔の素敵な彼でいてほしい。
沖田が振り落とした刃は、怯えた男ではなく……
―――ザシュッ…!
「……っ………」
男の前に飛び込んで来た、お華を左肩から下へと一気に斬り落としていた。
血飛沫が舞うなかで、お華はゆっくりと倒れていく。
固まったまま、その姿を見ていた沖田。
「う…うわぁぁぁぁ!」
慌てて逃げ出した男は、石段を転げ落ちるようにして逃げていく。
その時に「っおい、なんだありゃ?」と、男にぶつかられた原田がチッと舌打ちをした。
「なあ…、今の男…血が…」
逃げて行く男に血がついていた事を気にする永倉と、石段に飛び散った血痕を睨む土方。
「なんか嫌な予感がするぜ」
「…お華ちゃんと惣司郎に何かあったのかな?」
沖田と同じように帰りが遅いことを心配した土方、永倉、原田、藤堂は顔を見合わせた後、一斉に石段を駆け上って行った。