駆け抜けた少女【完】




「で、退屈しのぎに俺の部屋で暇つぶしか?」

「暇はつぶせてないですけどね」



屯所内をさ迷って辿り着いた場所は、鬼副長土方の部屋。


開いていた障子戸からヒョコっと中を覗くと、土方は文机に向かって難しい表情を浮かべいるところだった。



「なら、茶を頼んできてくれ」


暇だ暇だと背後でただをこねる矢央に用事を言いつける。


――――――が、


「嫌です」


即答で、拒否された。


「暇なんだろうが」

と、土方が振り返れば、畳に頬杖ついて横たわる矢央を見て呆れかえる。


「暇すぎて、忙しいとこなんです」

「いや、どっちだよ?」

「ですから、どうやって暇をつぶすべきか考えるのに忙しいんですよ、わかります?」

「いや、まったくわかんねぇ」


ハァと、溜め息をつかれる始末。



なんで、俺が呆れられてる?


「つまり、土方さんの世話をやいてる暇はないというわけです」

「暇だから遊びに来たっつったよな?」

「言いましたねー」

「なのに、暇じゃねぇってか?」



コクコクと頷く矢央は、どう見ても暇そうだ。

だらだらと畳の上に寝転がっているのだから。


一応年頃の女子。

その態度はどうなんだと、土方は深く溜め息を吐く。


「あー、暇っ! 土方さん、暇っ!」

「お前、まともな日本語を使え」

「私はまともな日本人だから大丈夫です!」





いや、かなり心配だ。






なんとも和やか時間が過ぎていた――――――




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