駆け抜けた少女【完】
*
竹刀がぶつかり合う音を聞きながら、一人涼しい顔で壁にもたれている沖田。
あーあまぁた、土方さん怒ってますねぇ。
おおかた矢央が土方の仕事の邪魔をしているなと、沖田は思いながら床に視線を向けた。
そんな沖田の側に寄る影。
「総司、ぼんやりしてどうした?」
「永倉さん」
朝起きた時には部屋に沖田の姿がなかった。
自分よりも早起きなので、沖田の姿がないことには何とも思わなかったのだが、布団がしまわれていなかったことに違和感を感じていた。
「布団は敷きっぱ、朝飯ん時にもいねぇときた…」
よいしょっと沖田の隣に腰掛けると、しょんぼりとする沖田の顔を覗き見る。
隈が出来ている。
寝ていないと予想がついた。
「あいつと、なんかあったか?」
"あいつ"と、わざと名前を言わない永倉に沖田は口元を緩ませる。
「永倉さんも人が悪い。
私と矢央さんの会話…聞いていたのでしょう?」
「……バレてんのね。
じゃあ話は早い―――……」
前髪をかきあげ、苦笑いを見せていた顔から一変し、永倉は鋭い目つきで沖田を見据えた。