駆け抜けた少女【完】





竹刀がぶつかり合う音を聞きながら、一人涼しい顔で壁にもたれている沖田。


あーあまぁた、土方さん怒ってますねぇ。


おおかた矢央が土方の仕事の邪魔をしているなと、沖田は思いながら床に視線を向けた。


そんな沖田の側に寄る影。



「総司、ぼんやりしてどうした?」

「永倉さん」


朝起きた時には部屋に沖田の姿がなかった。

自分よりも早起きなので、沖田の姿がないことには何とも思わなかったのだが、布団がしまわれていなかったことに違和感を感じていた。


「布団は敷きっぱ、朝飯ん時にもいねぇときた…」


よいしょっと沖田の隣に腰掛けると、しょんぼりとする沖田の顔を覗き見る。


隈が出来ている。

寝ていないと予想がついた。



「あいつと、なんかあったか?」


"あいつ"と、わざと名前を言わない永倉に沖田は口元を緩ませる。


「永倉さんも人が悪い。
私と矢央さんの会話…聞いていたのでしょう?」

「……バレてんのね。
じゃあ話は早い―――……」


前髪をかきあげ、苦笑いを見せていた顔から一変し、永倉は鋭い目つきで沖田を見据えた。



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