駆け抜けた少女【完】
「憎んでいるか………」
稽古を終えた永倉は、井戸場で汗を流そうと水を梳く上げていた。
桶にくまれた水の中に手拭いを入れたまま、ぼーっと沖田の言葉を頭の中で繰り返す。
『お華は、私を憎んでいるから……化けて出たのでしょうか』
眉尻を下げて切ない表情を浮かべた沖田に、永倉は何も言ってやることが出来なかった。
お華が沖田を憎んでいるはずはない。
憎んではいないが………
化けてでられてたまるかっての……
永倉も薄々わかっていた。
矢央とお華には、何か切っても切れない繋がりがあり。
その繋がりを、さらに繋げているのが沖田総司なのだろうと。
「お華、お前は……ちゃんと成仏できてねぇってのか」
空に向かって投げかけた声は、遠くから近づく足音にかき消されていく。
人の近づく気配にハッとし、永倉は上半身をさらけ出し本来の目的だった汗を手拭いで拭い始めた。