だから、君に
「そう思わないと、やりきれなかったんだ」
麻生さんの声に、僕は拳をにぎりしめた。
違う。やめてくれ。
僕のなかの獰猛で狡い部分が、彼の言葉に必死に抵抗している。
由紀は事故じゃない。
由紀は、僕たち家族の由紀は。
「あの子を、芹澤に引き取らせるべきではなかった」
静かだった麻生さんの声に、僅かな悔しさが載せられているのを感じた。
「あの子はうちにいさえすれば、普通の幸せを手に入れられたはずなのに」
やめてくれ。そう怒鳴りたいのに、うまく頭が働かない。身体が鉛のように重く、深く沈んでいくのがわかる。
由紀は僕たちといて幸せじゃなかったと言いたいのか。そんなはずはない。
そう言ってやりたいのに、そのことを実感しているのは、紛れも無く僕たち『家族』だ。