だから、君に
要領を得ないといったふうに、麻生は僕と祖父を見比べている。
この子は知らないのだ。知らないままでいいのだ。
だから、もう。
「美紀には言っていなかったがな、あの子は、由紀は本当は」
ガタン、と大きな音が教室中に響いた。
椅子をひっくり返し、自分が立ち上がっているのに気がついたのはその直後で、机の上で僕の拳が震えているのが視界に入る。
こめかみにひどく汗をかいているのを感じた。
僕を一瞥したあと、麻生さんはそっと目を伏せ、続けた。
「あの子は、……男だったんだ」
すう、と頭の芯が冷え切っていくのがわかる。
どうにもならない真実を突き付けられ、僕の身体はぐったりと力を失っていった。