だから、君に


翌日の朝、僕は実家を出た。
電話をした芹澤さんは、彼の家の最寄り駅まで迎えにきてくれると言った。
僕の住む街からも、母の住む町からもほぼ等距離、そう遠くない場所だった。

もう十年以上会っていない、かつて僕の父だった人。

電車に揺られ、窓の外に広がる海がきらきら光るのを眺める。

正月の車内は満席、家族連れで賑わっていた。
隣のボックス席は4人家族だ。
くたびれた顔の父親が寝息を立てている。
小さな女の子は、彼女より小さな男の子が弁当を頬張るのを、心配そうに見守っていた。

目的の駅に着いた僕が立ち上がったとき、男の子の口元を母親が拭いてやっているのが見えた。


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