だから、君に
改札を抜けると、大きな銀色の球体が僕を出迎えた。
そのモニュメントはこの駅における待ち合わせ場所になっているようで、晴れ着姿の女の子や、寒そうに息を吐く青年が、めいめいに僕らの出てきた改札に向けて目を走らせている。
「大志くん」
球体の周りできょろきょろしていた僕の背後から、低く穏やかな声がした。
振り向くと、背広を着た白髪混じりの男性が立っていた。
常に笑っているかのような目尻の優しい皺に、鳶色のきれいな瞳。
芹澤さん。そう呼びかけようとして、言葉が出てこない自分がいた。
しばらく黙ったまま、僕らはその場に立ち尽くしていた。